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アンノウンフライト & フォーミニッツ
さて次はアンノウン。アンノウンとは訳せば「知らされない」となる。演技の内容を渡されるのが18時間前なのである。パイロットが3人以上いるチームが得意技をひとつずつ提示し、それらをジャッジがうまくつなげて演技を作る。つまりアンノウンの演技は、ロシアやフランスなどのトップパイロットが得意とする技の連続になるわけで、必然的にどの種目よりも難しいものとなる。
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| 各国の国旗が翻るテント村。日本テントにはテルテル坊主がくくられて、やっと晴れた最終日。 |
手渡された演技は何やら複雑な記号だらけだ。練習時間の少ないトニーは、アンノウンのための特別な練習をしていない。渡された技の半分近くは全くやったことがないか、2、3回練習しただけというのが現実である。しかし、今まで練習した全てを応用すれば必ずできると思った。自分自身を信じることだ。
アンノウンはイメージトレーニングしかできない。フリーが終わってから、トニーは頭の中で何度も何度も飛んだ。ベッドに横になってからも片手には演技のカードを握りしめ、夢の中で飛んだ。
29日、フリーの演技がすべて終了すると、アンノウン中止が発表された。4日間の悪天候のせいである。規定とフリーが終了した時点で競技会は成立したことになる。トニーが飛ぶたびに、口から心臓が飛び出しそうな思いをしていた私は内心ほっとした。一方、アンノウンで少しでも順位を上げることを狙っていたトニーは悔しそうだ。しかし、こればっかりはどうしようもない。
総合78位、ビリから2番目。しかし、ランデイ の総評は
「I'm proud of Tony」(僕はトニーを誇りに思う)
みんなもまったくそのとおりだと思った。少ない練習時間でよくここまでやってくれた。私は心の中でもう一度拍手を送った。
トニーのピッツは用済みとなり、ピッツの工場へクリスが運んでいった。もうこの飛行機とも二度と会うことはないだろう。世界選手権を最後にドイツのオーナーのもとへ送られてゆくのである。ありがとう、Pitts S2B N98AV。
最終日30日はフォーミニッツを行なうことになった。フォーミニッツは上位約30%のパイロットが4分間のエアショーを行ない、それを採点する単独の競技である。
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| ピッツ S2S に乗ったカナダチームのランディ。主催者から頼まれてフォーミニッツに特別参加。 |
久々にゆっくり起きると、私たちは観客としてエアショーを楽しみに飛行場へ向った。5日ぶりの晴れわたった空。最終日にふさわしい天気だ。テント村にもにぎわいが戻っている。
31人のエアショーの開幕。他のパイロットのフライトにはほどんど関心を示さなかったパイロットたちが、この時ばかりは食い入るように見つめている。最後にエクサビションとして前回の世界選手権チャンピオン、フランス人パイロットの演技が終了したとき、テント村は総立ちとなり再び拍手に包まれた。今までアメリカ人パイロットのエアショーは幾度か見ているが、世界のトップパイロットたちのエアショーを間近で観戦し、これほどの感銘を受けたことはない。パイロットの顔がどうしても見たくて、私はまた走った。何と言っても、トニーに次いで拍手を受けた人だから。

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