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規定フライト
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| フライトに向けタクシングするトニーのピッツ S2B。ピッツの製造販売会社であるアヴィアットの所有機である。 |
22日、昼食休みの直前にトニーの公式規定フライトの順番が回ってきた。さほど緊張している様子もなく、笑顔で手を振り飛び立った。
パイロットやスタッフは常にテント村で順番を待っている。テント村とは、滑走路と平行に並んでいる21ヶ国分のテントとその回りの芝生地帯一帯である。関係者にはパスが渡されており、パスのない人は立入禁止である。要するに、関係者が一番近くで演技を見れるわけだ。自分のフライトの順番が近いパイロットは孤独にイメージトレーニングをしているが、他のパイロットたちはこのテント村の中を歩き回りあちこちで談笑し、ピンやワッペンを交換し合い、天候待ちのときはなどはフットボールやバレーボールまで始める始末である。驚いたことに、他のパイロットのフライトはあまり見ていない。
ところがトニーのフライトが始まると、その雑然としたテント村の雰囲気が一変した。みんながトニーに注目し始めたのだ。ひとつの技が終るたびに右隣の南アフリカから、ため息やかけ声が聞こえてくる。そしてトニーが終りの合図、羽振り3回をした直後、どこからともなく拍手が起こった。そしてテント村全体が拍手に包まれた。
一方私はトニーが飛び立った途端、余りの嬉しさに涙がとめどなく出てきて仕方がなかった。まさにトニーの夢がかなった瞬間。そして私の夢がかなった瞬間でもある。
そんな私たちの思いを知っていたかのように暖かい拍手がわき起こり、私の涙は満面の笑顔へとかわった。南アフリカのチーフパイロットに「Good flight, good flight !! 」と声をかけられたとき、飛び上がって叫んだ。
「よかった!!」
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| 規定フライトを終え、満足感と喜びに包まれていた。 |
デイヴから、ブレイクもなく、技も忘れることなくすべて順番どおりにこなしたということを聞き、トニーを迎えに走った。
コックピットを開けて出てきたトニーの顔は、汗にまみれ、笑顔でゆがんでいた。瞳にうっすらと涙をうかべながら、言った。
「全部飛んだよ」
格納庫への移動中、競技委員長のカール・ウィットルがにこやかにガッツサインで出迎えてくれた。出場の手続きをする時からずっと面倒を見てくれた人。彼が認めてくれたということが、トニーは何より嬉しかった。そして格納庫ではケーブルテレビのリポーターが待っていた。
テントに戻ってきたトニーは、続々とやって来るパイロットたちから暖かい祝福を受けた。
「ピッツであそこまでよくやった」
「ここにいるパイロットの90%は、ピッツであれだけ飛べないよ」
「今度はもっと性能のいい飛行機で飛んでごらん」
結果は79人中78位であったが、トニーは世界のトップパイロットたちから仲間として認められたのである。
「参加すること」はこうして達成された。

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