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プラクティスフライト

 

19日、毎朝7時から始まるミーテイ ングに出席するため5時に起床し、デイヴの運転で競技会場となるページ・エアポートとホテルを往復する。このスケジュールは29日まで続くことになる。19日のミーテイ ングで初の抽選が行なわれた。大会中たった一度、それも10分だけの競技空域での練習の順番を決めるためである。この抽選を含め数日置きに行なわれた計4回の抽選で、トニーは練習13国目、規定28人目、フリー56人目、アンノウン13人目を引き当てた。

 

暑い中コックピットも閉め、ひとり集中するフライト前。

20日、今日は必ず順番が回ってくる。トニーにとって世界選手権初のフライトだ。とにかく練習なのだから気楽に、という思いをよそに、ランデイ は規定の演技を飛べと言う。はたして規定をブレイクしないで飛べるだろうか。

 

競技空域はたてよこ1000メートル、最高高度1000メートル、最低高度100メートルの立方体である。頭で考えるとこの空域はかなり大きいように思えるが、実際に目にすると決して大きいとはいえない。まして時速320km/hで飛びながら技をするわけであるから、ひとっ飛びで端から端まで行ってしまう。その小さな競技空域からはみ出る度に減点される。さらに、最低高度を割ると危険行為と見なされ、完璧な演技をしても0点になってしまう。

 

ブレイクとは競技空域から自らの意思で出ることである。出る時と再突入する時にはジャッジにわかるように羽根振り3回で合図する。ブレイクは演技の途中でうっかり空域からはみ出た場合よりも減点が大きい。

 

ピッツは他の参加機体より空気抵抗が大きいため、加速性が悪く減速が速い。結果としてどんどん高度が落ちていくので、自らブレイクしなければならない可能性が高くなる。ランディには規定もフリーも2回のブレイクは仕方がないと言われているが、なるべくならブレイクしたくない。

 

タクシーウェイの横に並ぶ最新鋭のエアロバティック機たち。手前から、エキストラ300L、スーコイ31、テキサスハリケーン、スーコイ31。

トニーのピッツはオクラホマの晴れ渡った空に気持ちよく飛び上がった。単葉機で大型のスーコイを見なれていた目には、ピッツの何と小さくかわいいことか。地平線を確認しながら大きな螺旋を描く。高度ロスや演技の流れを考え最高高度をはみださないような開始高度を決定する。競技空域に進入する時には急降下しなければならない。とにかくどんどん昇るのだ。小さなピッツはさらに小さくなってゆく。勢いをつけるために急降下が始まった。進入の合図である羽根振りが3回。いよいよトニーの世界選手権初のフライトが始まった。規定の最初の技は垂直上昇しながら1¼ ロール、そしてプルオーバーで機首を下に向け、垂直下降しながら1¼ スナップロール。2日ぶりのフライトを思う存分楽しむように演技だ。小さいピッツは確かに見栄えがしない。だが、着実に技をこなしてゆく。規定の14個の技を終えたとき驚いた。ブレイクしなかったじゃないか。

 

トニーを最初に迎えたのは、ランデイ だった。
「トニーよくやった。この練習でトニーが世界選手権に出場できる技量のあることが証明された。しかもとても安定したフライトだった。トニー、お前の目的は75%達成されたんだよ。日本人初出場おめでとう!!」

 

この練習で技量が試されていたことを知らなかったデイヴと私は喜んだ。もし技量が足りないと見なされれば、以後の公式競技に参加させてもらえないところだったのだ。

写真:トニー比嘉・寺島珠生
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