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WORLD AEROBATICS CHAMPIONSHIP
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大会に参加するまで

 

日本チームはパイロットのトニー、マネージャーのデイヴィッド・クリム、メカニックのクリス・エドモンドソンの3人である。ひとりで参加することを知ったふたりが応援を申し出てくれたのだ。ふたりともランデイ の生徒であるから心強い。わざわざ休暇を取り、遅れて来るクリスは何とイギリスから来てくれるという。

 

日本チーム、左からクリス、トニー、デイヴィッド。

JAPANのプラカードを持つボーイスカウトの少年に続き、トニーとデイヴが行く。この時トニーの胸の内にどんな思いが去来していたのか。予定どおりにできなかったロスでのトレーニング、ワイオミング州アフトンでの機体の整備に費やした4日間、オクラホマ州北部アルバでのカナダチームとのキャンプ、13年前数ヶ月で帰るからと言い残し別れを告げた沖縄の家族、ここまで支えてくれた友人、東京の家族、そして何より明日からの競技会への不安と期待だったにちがいない。

 

参加国21ヶ国のうち初参加は日本だけ。各国は機体をばらして運び現地で組み立てている。ロシアにいたっては、機体をまるごと運ぶ軍の輸送機でやって来る。国が機体を提供しているチームもあると聞く。さらにエアロバテイック・タイム数千時間という78名のトップパイロットに囲まれ、トニーは60時間である。それらのパイロットたちが最高性能を誇るロシア製スーコイ、ドイツ製エクストラ、フランス製キャップなどで参加している。トニーのピッツの性能が最低であるのは明かだ。はたしてまともに飛べるのか?トニー以外のすべての関係者が一度は思ったにちがいない。

 

トニーは3ヶ月前に行なわれたロス近郊の競技会ではスポーツマンクラスに出場していた。競技会には5つのレベルがあり、スポーツマンは下から2番目、世界選手権となれば最高レベルのアンリミテッドだ。いっきに3段階アップしたわけである。無謀と言われればそれまでだが、それでもなおトニーが世界選手権に出場する決心をしたのは、カナダの代表でもあるインストラクターのランデイの一言にある。
「トニー行けるぞ。おまえならできる」

 

のんびりとカナダチームのトレーニングを眺める陽気なアルバの人々。

大会開催5日前、トニーはカナダチームとの合同キャンプのため、ワイオミング州アフトンからオクラホマ州北部の人口6000人の小さな町アルバに入った。カナダチームは5人、計6人の訪問はこの町にちょっとした興奮をもたらした。アメリカ中南部特有の限りなく平坦な地形のため、町中どこにいても、ふと見上げればエアロバティックという状況は町始まって以来の珍事だったようだ。トニーたちは昼食や夕食に招待され、BBQパーティでは募金を集めてくれ、何と町の新聞に写真入りで大々的に載るという歓迎ぶりだった。私が行けなかったのが何とも残念だ。

 

そしてトニーが最終的に出場を決定したのはこの地である。ここでのトレーニングでトニーの技量は格段に向上した。それは、アルバがカナダチームとトニーのために飛行場を1日中解放してくれたことにある。他の飛行機はトニーたちのトレーニングの合間をぬって離着陸するをいう気の使いようであった。精神的にも肉体的にも、はじめて充実したトレーニングを行えたわけである。

 

開会式の始まる5時間前、ぎりぎりまでトレーニングしていたトニーとカナダチームは、160km離れたペイジ・エアポートを目指し3機編隊で飛び立った。アルバ上空を大きく旋回し、別れを告げた。

写真:トニー比嘉・寺島珠生
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